さくらんぼ、ひとつ。
なんか大変そうだな…

「仕事のこととかは、また明日言うから。

今日はこれで。帰っていいわよ。」

沖田先生は優しく微笑むと

職員室の方へ帰っていった。

「俺、山本昂。よろしく。」

ちょっと恥ずかしそうに、

頭をかきながら、その男子は言った。

「…高橋藍那、、よろしく」

あたしが緊張しながらそう言うと、

山本くんは、にこっと微笑んだ。

白い歯が眩しくて、

キュッと細くなった目が

なんだか懐かしかった。

「じゃ、明日からよろしくね!」

そう言い残して、山本くんは、

風のように走って体育館を出て行った。


「藍那、先生なんて?」

玄関に行くと、結衣がいた。

「え?なんか学級長してーって。」

「ふーん。」

あたしは、上履きを下駄箱に入れた。

「てか!さっき山本がちょっと前に

出て行ったんだけど、もしかして山本と?」

結衣はあたしを指差しながら言った。

「そうだけど…」

「まじで!?よかったね!藍那!!」

「な、なにが!?」

「なにがって、ちょっと藍那!!

山本は学年一のモテ男くんだよ!?」

「えっ、そうなの?」

「そうだよー。

藍那そんなことも知らなかったの!?」

「知らないよー!

だってあたし山本くんのこと

今日、初めて知ったし。」

「まー無理もないか。学年200人だもんね。」

「そーだよ。知らない人いっぱいいるよ」


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