さくらんぼ、ひとつ。
あたしは、ちょっとブカブカのローファーに

足をすべらせた。

「知ってる?

山本ってさ、1年のとき、

14人に告られたんだって!」

「なに、そのリアルな数字。」

「しーかーも!

全部断ったらしーの!!」

「えーっ。

誰も好きになれなかったのかなー?」

あたしは、山本くんの顔を

なんとなく思い浮かべてみた。

「にしても、フリすぎー。」

「本当に好きな人じゃないと

付き合いません!みたいな?」

「ははっ、

モテる子ってみんなそうだよねー。」

あたしと結衣は、2人で並んで、

生徒玄関を出た。

誰もいなくなった校門付近は、

ただ、桜が風に揺られていた。

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