愛しているから、さようなら!【BL】
「なあ、あゆかと付き合ってんの?」
告白されてから数日経って、
拓真にそう、尋ねられた。
あゆかと言うのは、あの子の名前だ。
「ううん、違うよ」
「でも、最近よく喋ってるだろ?」
彼は少々、機嫌が悪い。
「うん」
「うん。じゃなくて!」
どうしたんだ急に。とそう聞かれた。
「実はさ、こないだ告白されて」
「断ったのか?」
「そうだよ」
……本当は一瞬だけ、
付き合ってみようかと思う時もあった。
何度か冗談めいて彼女も言ってくるし、
それに、もしかすると好きになれるかも。
彼の事なんて、気の迷いか、
思春期の何かがそう思わせているだけではないのか。
そんな事を思ってみたからだ。
でも、何度想像してみても、
彼女が僕の隣で、恋人らしい事をする姿は
まったく思い浮かばなかった。
彼の隣なら、夢に見るほどなのに。
「ふーん?
ならいいけどさ、なんかあったなら
絶対俺に言えよ?絶対だからな?」
親友なんだから。と、彼は言う。
僕もそれだけの思いでいられたら。
そうしたらどれだけ、楽なんだろう。