転生と赤い糸
「・・え・・・妊娠??」
あたしにはあまりにも大きな話で、缶コーヒーを持つ手に力が入る。
「そう。当時付き合ってた男の子供を妊娠したんだ・・・で、その男はばっくれちゃってさ。未成年だし、親も出て捜したんだけど、名前も何もかも嘘ばっかだったから、見つからなくて。
結局、残念な結果になったんだけど・・・」
「・・・・・・」
「その時に、サナが精神的にも参ってて、私がこんな風になったのは龍のせいだって言い出したわけ。龍の性格だから、そういうサナをほっとけなくて、たまに二人で会ってたりしたみたい・・・」
拓也君はグイッとコーヒーを飲み干して、チラっとあたしを見た。
「昨日はさ、いつまでもこのままじゃダメだって事で、龍がサナに話をしに行ったんだ。《俺には綾がいるから》って。そしたら、サナがまたダダこねだしたみたいで。私から離れないでって・・って。それでも離れるなら、キスしてって・・・」
「・・だから・・キスしたって事?」
「・・そういうことみたい。サナも本当はわかってるんだよ。龍には綾ちゃんしか見えてないって。でも、やっぱり、サナには龍しか頼れるヤツがいないからさ。」
・・だからって・・・いつまでも龍を離さないでいるなんて納得いかない・・・
「龍は・・・龍は、どうしたいんだろ・・・今日もサナさんと会ってるんでしょ?」
「龍は、綾ちゃんが好きだから。今日も、ちゃんとサナと終わるために話をつけてるんだと思う。だから、もう少し龍を待っててやって。」
拓也君はそう言うと、あたしの空の缶を取ってゴミ箱に捨てに行った。