月の下でキスと罰を。
 瀬良はいつも青白い不健康な顔をしていたし、体も細い。

 あたしは、話せないし動けないから、だから肌で耳で目で唇で、体全体でまわりを伺い知るようにしている。そしてそれら全ては、瀬良から貰ったものだし、瀬良が触れたもの、瀬良から産まれたものだから、彼のことなら手に取るように解る。

 願いが叶うならば、瀬良に愛していると伝えたいのだけれど。


 いろいろと考えていたら、あたしの視界は真っ暗になった。箱に蓋がされたのだ。

「じゃあ、あと振込先だけ連絡してちょうだい。追って連絡するわ」

「お気をつけて」


 本当に蘭子のところへ売ってしまったのか。

 生きるために仕方がない、のか……。

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