月の下でキスと罰を。
 すべすべした白い肌とふんだんな黒髪は、作り手の趣味だけど、でもあたしは嫌なわけではなくてむしろ気に入っている。

 あたしは人形。


 まだ髪の貼られていないビスクの顔、顔、顔。

 古い平屋の一角にある、四畳半の部屋が工房。そこであたしは産まれた。

 美しい男の、美しい手によって。

 あたしは、人形。

 小さめの胸と、枝のような手足と。球体がはめ込まれた小さな膝小僧、とりわけ気に入っているのは目、瞳の色、それと何か語りたそうにしている濡れたように紅い唇。150cm程の体は、血は流れていないものの、観る人の視線によって温められる。それと同時に、観ている人の中にも熱が帯びてゆく。


 オニキスが使われた瞳の、あたしは人形。



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