月の下でキスと罰を。
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それから少しして、蘭子の家に瀬良がやってきた。ああ、瀬良! 会いたかった会いたかった。
あたしは、久しぶりに体が温かくなるのを感じた。
「取材、少し入れておいたから。この間の展示、海外の方もいらしていたしね」
「ありがとう、ございます」
手放しで喜んでる風ではなかったけれど、瀬良は微笑んだ。
「聞こうと思ってたんだけど、蘭子さん体調でも悪いんですか? 顔色が悪いですよ」
少しの間。
蘭子はあたしを指差す。瀬良はあたしを見る。
「ね、またなのよ」
ケースが開けられる。瀬良、元気そうで良かった。会いたかった。
「また、泣いているのか……」
泣いてなんかいないわ、寂しかったのよ。あたしずっとあなたを……。