月の下でキスと罰を。
瀬良は、あたしをガラスケースから、そっと抱き上げて出してくれた。ふわっと、体に羽根が生えたよう。全身に、嬉しさが満ちてゆく。
「お、お金はいいわ……契約のお祝いだったと思えば」
少し震えたような声で、蘭子は言う。
「蘭子さん」
瀬良の低い声。暫くぶりに、そばで聞く。
「……僕の事も、気味が悪いと思ってるでしょう」
瀬良の腕の中。
「瀬良くん!」
部屋に蘭子の声が響いたが、繋ぎ止めたいだけの、なんの魅力もないものだった。
口元だけで笑って、瀬良はあたしを抱えて蘭子の家を出た。