月の下でキスと罰を。
カヨは頬杖をつき、工房の隣の部屋で椅子に座っている。客などが来るとそのテーブルで話したり、食事をしたりする。
「カヨは大学へ通う理由って」
「あたしは学校の先生になりたいからよ」
キッパリと言い切った。瀬良は「そうだった」とか言いながら頷いていた。
「有名か……貧乏だけど」
片方の口の端っこを上げて笑う瀬良。
「貧乏とか関係ないじゃん。太宰とか有名だけど貧乏だったよ」
カヨがぼそっと言う。
「うーん、なんていうか」
人差し指、こめかみに当てて瀬良が言う。
「キミとかさ、居なくなっちゃうかもしれないだろ?」
「え?」
「永遠に、僕の側にいるわけじゃないだろ?」
言っている事が分からない様子で、カヨは眉間に皺を寄せた。更に首を傾げる。