月の下でキスと罰を。

 繰り返す日常のせいで、自分は1人だと気付いてしまう。

 あたしもそうだ。瀬良がいなければ、ひとりぼっちだと。瀬良は、たとえ人が側に居てもひとりだと思っている。

 太陽が昇って沈んで、月が出てそれに照らされてを繰り返す。


「この子達だって、あなたが居なくなったら可哀想」

「……そうだね。この子達は僕だ」

 瀬良から産まれた人形達。そして心を持つあたし。


「あたしだって、どこにも行かないわよ……」

 カヨがそう小さく言ったのを、あたしは聞き逃さなかった。すこしだけ、こちらを見たカヨ。その言葉は瀬良には聞こえたのだろうか。

 背中に、埃っぽい夏の暑さを背負って。



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