月の下でキスと罰を。

 ごくたまに、「しゅざい」をしに人が来ていた。

 その時に女は家に居たり居なかったりしていた。そして、その「しゅざい」も段々と減っていった。

 あたしは、蘭子を思い出した。

 彼女は瀬良人形師として注目させたかった。瀬良を認めていたし、世間にも認めさせたかったに違いない。それが愛かどうかは別として。

 瀬良が写っている紙を何枚か見たことがある。蘭子の家にもあったから。中にはあたしが写った紙も、あった。


 でもそれも、時間とともに減っていく。


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