月の下でキスと罰を。


 瀬良は、暗い家でテーブルの上のコップを掴んだ。そして液体を飲み干す。静まりかえった家の中、おもむろに工房の灯りを付けて、作業台に向かう。


 もうずっと前にカヨは、何も言わずに出ていった。何も言わなかった。

 絶望した顔をして、瀬良を一度見て、そして無言のまま家を出ていった。

 瀬良も無言で、真っ白い手を掴んで黙々と人型を作っている。


 いま、夜のどの辺りなのだろうか。

< 47 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop