月の下でキスと罰を。
「女の事ですしね。そのせいで展示の話が流れたでしょう。それから何もしていないようだし」

 少し俯いて、視線をカヨがぶら下がっていた辺りへ向ける瀬良。暗い顔をしていた。


「天才人形師、このまま埋もれさせてしまうわけにはいかない」

 それを聞いて、瀬良が笑ったような困ったような顔をして、長い睫毛が瞳に影を落とす。

「……あった」

 男はあたしを見つけ、そうつぶやいた。

「月、ですよねこの子は。……すばらしい」

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