月の下でキスと罰を。
 小田桐と呼ばれた男は、優しく微笑んだ。まるで小さい子供にでも微笑むように。でも確かに時折、瀬良はとても小さな子供のように見えるときがある。

「……契約、ですか?」

「そうだ、契約だ。最近、人形作っていないでしょう。サポートしますし、何も心配いりません」

「作っては、いるんですけれど、一応」

 作っているけど、集中できない、最後まで行かないといったところだろうか。見ていて分かる。毎日見ているのだから。


「世間は再び注目するよ、君は見た目も魅力的だから」

 優しく笑顔を作る小田桐は、瀬良よりも少し年上に見えた。


 瀬良のような、病的で脆く崩れそうな魅力とは反対の、意志が強く、心に燃えるものがあるような目をしていた。


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