月の下でキスと罰を。
 小田桐としばらく話をしていた瀬良は、終始虚ろで。小田桐の優しい笑顔は変わらなかった。

 二人、工房の隣の部屋でテーブルに向かい合い座っている。

「親御さんは? この家に一人でいるのか?」

「両親は居ません。死んだから。親戚も知らないし、僕はひとりです」

「そうなのか……」

「ずっと、ひとりです」

 二人は席を立ち、話をしながら工房まで来た。瀬良は受け答えをしながらあたしを見ていた。

 ひとりじゃないよ、あたしが一緒に居るじゃない、そう言いたかったけれど。


「契約ったって、何も持ってません僕は。人形を作ることと、あとはこの体だけです」

「……」

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