月の下でキスと罰を。

「僕と別れるのは辛いかい?」


 展示が終わって、帰宅した後。


 箱に入ったあたしに瀬良はそう話しかける。あの女に売るつもりなのだろう。あたしはイヤだと思ったが、話せるわけではなかったし、何が一番良い方法なのか分からなかった。


 約束の日に瀬良は、蘭子に電話をかけ、引き取りに来るように言っていた。そしてあたしに新しい白いレースのドレスを着せて、棺のような箱に寝かせた。


 あたしは箱の中で息を潜めていた。



< 7 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop