ココロごと
勝負服を着て堂々と咲の待つ部屋へ移動する。


大貴には負けたくねぇ。そんな気持ちがずっと胸にあった。


「おはよう!」
ドアを開けると同時に口を開いた。


テンションを下げるのを忘れ、咲の顔をみると案の定キョトンとしていた。


「なんかいいことでもあったの?」


「いや、別に」



目は合わさなかったものの、久々の私服姿に胸が絞まった。
この関係に得したと思う。


でも俺の口は素直に喜ばない。



「少し太ったな、咲」



“可愛い”の一言さえ言えない自分が馬鹿に思えてくる。


「最低だね君は」


呆れた発言にふさわしい言葉を返してくれた。
頬杖をつき、テレビを観る彼女。


大貴より有利な位置にいるはずの俺は、なんで彼女がこんなにも遠く感じるんだろう。



そもそも距離を縮めないようにしてきた俺が悪いんだろうけど、そのおかげでもある関係なんだよな。
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