ココロごと
とんでもなく長く感じる列を見事な雑談で切り抜け、俺達の番がやってきた。


「俺、咲ちゃんのと~なり」


咲が右側に座った瞬間、大貴が強引に左に座る。



しまったと思いつつ夏樹ちゃんと一緒に腰を下ろした。


安全レバーが下ろされた時、誰かの小声で「よし」って聞こえた気がした。



カタンカタンという音と同時にゆっくりと動き出す。


「実は初めてなんだ、ジェットコースター」

顔を下に向けて、どうしようという具合に夏樹ちゃんの声が届く。


まさかのカミングアウトに驚いた。次第に背中が後ろに吸い付く。


「手、つないでいいかな?」


「あ~、うん」


俺は心もとない返事をした。

それでも夏樹ちゃんはほっと安堵したように遠慮なく俺の手を握った。


きゃしゃだなぁと頭に浮かべた次の瞬間、目の前はもう線路だった。



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