ココロごと
ゆりかごように揺れだした観覧車がそこらじゅうの人達を小さくする。



腕を組むカップルや、ふざけあう三人組、離れたお母さんを見失わないように必死でついていく子供。



そんな一日をみんな同じ場所で過ごしている。俺もその一人。

足を伸ばせば届く距離にいる女の子を前に何を言おうかと迷っていた。


「久しぶりだよ、こんな楽しい時間」


相変わらずの唇を少し噛む癖を見せた後、彼女の口から沈黙は破られた。


「礼なら大貴に言ってよ」


俺は今日のことは大貴の咲への告白のためなのだと説明した。


「そっか...。じゃあ今ごろ告白してるかもね」



うん、と答えながら後に乗った二人の場所を見た。


「気になる?」


少し笑いを交えながら聞かれた。「別に」と慌てているのがバレないように答えた。しかし次の一言で崩れる。



「やっぱり咲が好きなんだよね...」




ため息交じりに放った言葉に俺は動揺をやっぱり隠せなかった。
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