ココロごと
「起立、礼、着席」
室長の心地いい三拍子でHRが始まった。

せわしない教室の中に、先生の声が響く。
「静かにしなさい、では連絡をします...」
不意に咲と目が合った。右端と左端の席で目が合うことはほとんどないのに。




すると、先生の咳払いが聞こえてきたので少し前を見る。
「先日の自転車事故の話だが...」
先生の切り出しで、一人の生徒にクラス全員の視線が集中した。


「おいおい、みんなそんなに見つめんなよ」
そう声を上げるのは、木村 大貴。俺の親友だ。

顔は中の上。自称“モテ男”だそうだ。


「和人も見てないで助けてくれよー」



「やだね、事故男」




「あぁ、ひっでー」
少しだけ教室に笑いがこぼれる。




「はいはい、静かにー」
先生の手拍子で教室の空気をもどす。





「とにかく、今回は無事で済んだが、みんな気をつけるように」
先生が教室を出て行くと、またせわしなく空気が動き出した。

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