ココロごと
「あの時はな...」
大貴はまたしても事故のことを語りだした。


大貴の言う内容はこうだ。

「俺はあの時自転車のライトが点かなかったんだよ。そんで十字路に飛び出したら、キキーッ!!って音が聞こえてさ...」



後はほとんど怪我しなかったという伝説を延々と語りだす。




「で、腕と顔のかすり傷で済んだわけだ...っておい!」

机に腕を組んで顔をうずくまらせていると、大貴は俺の頭にツッコミをいれる。

「今日朝寝てないんだよ」
あくびをしながら言った。



「私のせいだとでも?」
地獄耳かよ。いつの間にか前に咲が立っていた。


「おぉ咲ちゃん!おはよう!」
なぜかテンションの上がる大貴。




おはよう、と謙虚に答える咲。


「なんでさっきこっち見てたの?」
咲の言葉を受け流すかのように訊いた。

あれ?っといった表情で俺を見る彼女。その時俺はその表情の意味を知らなかった。




咲は自分の髪の毛を何本かまとめて持ってみせた。





「それ俺もさっき気付いた」
大貴が俺の髪の毛をひっぱりながら言った。





俺は少し笑ってみせた後、また腕の中に顔をうずくまらせた。
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