さよなら、片思い【完】
夢だと思った。


でもわたしを抱きしめる上原くんの力強い腕の感触がこれが現実だとわたしに教えてくれた。


「まったく、哲は不器用なんだから。離れられないくらいなら手離すんじゃないよ」


「あぁ、もう二度と手離さないよ」


「惚気は聞きたくありませーん。さっ、店閉まいするから帰った帰った!」


律さんは呆れながら上原くんにそんなことを言ったけど最後に「よかったね」と微笑んでくれて。


本当、上原くんの周りの人たちはなんでこんなにも温かい人が多いんだろう。


そして、お互いの気持ちを伝え終わったあと、上原くんと一緒に律さんに見送られながらわたしは喫茶店を後にした。


「由香里にさ。昨日告白して、唯とは偽りの関係だったって、今までのこと全部話したとき驚いてた」


上原くんとふたり、わたしの部屋のソファに座りながら上原くんはポツリポツリと話しだした。


「そしたらめっちゃ怒られた。唯ちゃんの気持ちをなんだと思ってるんだ!って。律にも言われたんだ。唯ちゃんと別れて、このままでいたら他の男に奪われるって説教された。それだけは絶対に嫌だった」


上原くんはそっとわたしの頬に掌をあて見つめてきた。


「唯が俺以外の他の男と付き合うって考えただけで、気が狂いそうになったよ。情けないだろ?」


「わたしは…どんな上原くんでも好き。上原くんが幸せになれるならって、良い子ぶって理解のあるフリしてっ…本当は凄く辛かったっ!…情けないでしょ?」


「じゃあ似た者同士でお似合いだな、俺ら」
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