さよなら、片思い【完】
「よっ、浮気者。相変わらず遅刻癖が抜けないのな」


大学の学食のテーブルで項垂れていると上から声が聞こえた。


「うるせぇ、哲。笑いたきゃ笑えよ」


哲が唯ちゃんとデートしてるときに浮気現場を見られて、そのときはなんとか誤魔化せたけど今回は誤魔化しきれず浮気がバレたと告げた。


「バカだろ、お前。なんで後悔するくらいなら浮気なんかするんだよ」


「哲だってわかるだろ!?お前だって昔はいっぱい女の子たちと遊んでたじゃんか!!!」


哲だって唯ちゃんと付き合い始めてからは女遊びはぴたりと止んだけど、それ以前は俺と同じくらい遊んでたんだ。浮気心だって絶対あるはず!


「わかんねぇよ」


俺の前に座っている哲は今まで見たこともない真剣な表情をしていた。


「唯を失うなんてそれ以上に怖いことなんて俺にはないよ。唯以上の存在なんて考えられないんだ」


「…惚気なんて聞きたくねぇよー…」


そうまたため息をつく。


「謝れよ、由香里に。ちゃんと自分の気持ち伝えてこい」


「今更どの面下げて謝れっていうんだよ…」


「もっと足掻け。かっこ悪くなったって必死で由香里に想いを伝えろよ。それから後悔したって遅くないだろ?」


哲ってこんな熱い男だったっけ?クールで恋愛に関してはドライなヤツだったのに。


「哲ってそんなかっこいいヤツだったけ?ヤバ、惚れそう」


「気持ち悪いこと言うんじゃねぇ。俺には唯だけだ」


「俺も由香里だけだ」


その言葉を呟いて自分の中のモヤモヤが晴れた気がした。


そうだよな、俺には由香里だけだ。あんなに愛した女は由香里だけ。


「哲、サンキュ」


「おぉ、ちゃんと振られてこい」


哲にお礼を言って学食を出て携帯から由香里の番号を呼び出してかけるけど応答がない。


学校には絶対いるはずなのに!


どこにいるんだよ、由香里。今すぐ気持ちを伝えたいのに。
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