さよなら、片思い【完】
本を返却してまた本を借りようと本棚に向かう。


あった、あった。


ちょっと昔の本だけどイギリス人作家のミステリーシリーズ。


有名ではないけれど、あまりの面白さに徹夜して読んだ小説。


「その本、好きなの?」


上原くんの声が聞こえて振り返る。


「俺も好き。そのシリーズ」


「えっと…好き、です。ゆっ、唯ちゃんに勧められて…」


絞り出すように、やっとの思いで口を開いたけど、ちゃんと伝わってるのか不安になる。


「俺も。唯に勧められてハマって一気に読んだ」


「わっ!わたしも、です…徹夜して、読みました!」


上原くんと会話をしてる。しかも共通の話題で。


嬉しくてつい喋る声に力が入る。


「ハハッ。デカイ声出せるじゃん、小沢」
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