さよなら、片思い【完】
「いらっしゃい、哲くん。ほら、唯!そんな玄関先でボーってしないで入ってらっしゃい!」


久しぶりに会うお母さんは何故かお出かけ用の一張羅を着ていて、


「た、ただいま…」


「お、おかえり…」


お父さんもスーツを着ていていつも静かな人だけど、今日は更に静かだ。


ふたりともおめかしをしていて、こっちでも結婚式があったのかな?


と、そんなことを考えているとお母さんが差し出した座布団に哲くんが正座をする。


「唯もそんなとこで突っ立ってないで、座りなさい」


お母さんに促されてわたしも正座をして座る。


だって、哲くんだけじゃなくてお父さんもお母さんも正座をしているから。


「今日はこんな夜分遅くにお邪魔して申し訳ございません。時間を頂きありがとうございます」


「いいのよ。哲くんから連絡来てからお父さんと楽しみにしてたんだから」


哲くん、うちのお母さんに連絡を取っていたの?


哲くんを見ると今まで見たこともないほどの真剣な横顔で。


そして哲くんは大きくゆっくりと一呼吸ついた。


「本日はおふたりにお許しを頂きたく参りました。


唯さんと結婚したいと思います」


哲くんの言葉に脳内が追いつかなくて頭が真っ白になる。


「僕の全てをかけて、唯さんを幸せにします」
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