さよなら、片思い【完】
彼と昔の思い出と
軽井沢旅行から帰りわたしはバイト先である喫茶店にお土産を持ってやって来た。


軽井沢の新鮮なミルクを使ったラスクはマスターにも金井さんにも好評で、今度喫茶店の新メニューにもラスクを入れようかとまで話が膨らんだ。


新メニューか、マスターの作るお菓子はどれも絶品だから今からすごく楽しみ。


上原くんにも食べさせてあげたいな。


そんなことを考えていると律さんがらしくもなくドタバタとしながらやってきた。


「あっ!唯ちゃん!ちょうどいいとこに来てくれた!」


カゴバケットを手にやってきた律さんはなんだか慌ててる様子。


「お休みの日に悪いんだけどこのサンドイッチ、由香里のところまで届けてほしいんだ!」


「由香里さんのところですか?」


「そう、由香里の撮影スタジオ。長丁場になってるみたいでケータリング注文が入ったの。本当はわたしが行きたいんだけど、愛理がぐずっちゃって」


困ってる様子の律さんに断る理由もなく、わたしは二つ返事で了承しサンドイッチが入っているカゴバケットとコーヒーの入った水筒を受け取った。


由香里さんの撮影スタジオはここから二駅先の街。


普段降りたことのない駅だけど律さんが丁寧に地図を書いてくれたから迷わずに着くことが出来た。
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