さよなら、片思い【完】
高井くんのセリフに眉間に皺を寄せる由香里さん。


あぁ、せっかくの綺麗な顔が…。


「ってか、唯ちゃんに馴れ馴れしくしないでよ!唯ちゃんにはね、哲っていうあんたよりもすっごくかっこいい彼氏がいるんだから!」


「へぇ〜、泣き虫チビちゃんに彼氏?彼氏相当ドSなんだね。もしくは変態?」


「なんで、そんなこと言うの…?上原くんは優しいよ?」


その一言に頭で考えるより先に言葉が出た。


「優しい?だって唯みたいな子を泣かせるのが楽しいってタイプの男だろ、そいつ」


バシンッ!


スタジオ中に響き渡った頬を叩く乾いた音。


驚いている由香里さんや他のモデルさんたち。


スタッフさんは慌てて冷えたタオルで高井くんの少し赤くなった頬の応急処置をしている。


そして、呆然としている高井くん。


ハッと我に返り、わたしは「すみませんっ!」と謝ってスタジオを出た。


お店に戻る途中、涙が次から次へと溢れ出てきた。


許せなかった。


上原くんをバカにされたような気がして。


由香里さんが好きなのに、わたしのわがままでわたしと付き合ってくれている。


そんなこと、本当に優しい人じゃなきゃできっこない。


その優しさを知ってるから余計に腹が立った。


会いたいよ、上原くん。


今、あなたに会って抱きしめてもらいたいよ。
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