さよなら、片思い【完】
「怒る?その逆。ゲラゲラ笑ってたよ。スカッとしたって。唯に感謝してた」


由香里さんも上原くん同様、優しい人。


上原くんのことがなかったら、本当のお友達になりたい。


そう思ってしまうのはおこがましいかな。


「そいつ、この前軽井沢で唯が話してたガキ大将なんだろ?」


上原くんの問いにコクリと頷く。


「生まれて初めて人を叩いたの…」


「ごめんな、俺のせいで。こんな小さな掌で、痛かったよな」


痛かった、掌なんかじゃなく、心が。


「大丈夫、唯のことは俺が守る」


わたしは先ほど高井くんの頬を叩いた掌を見つめる。


すると上原くんがわたしの掌ををその大きく暖かい掌で包んできた。



「言ったろ?唯を守ってた藤堂さんが羨ましいって。今度は俺に唯を守らせて」


「ありがとう」


上原くんの優しさに触れて、わたしは冷めてしまったミルクを口にする。


冷めてしまったけれど、とても優しい味がした。
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