さよなら、片思い【完】
「今日は面倒みてくれてありがとう。ほら、玲央もお礼言いなさい」


「お姉ちゃん、お兄ちゃん。ありがとうございました!また遊んでね!」


「うん。また遊ぼうね」


レオくんが小さな小指を立ててきたのでわたしはその指と指切りをした。


「唯、そいつと別れたら俺に報告しろよ?いつでも迎えにいくから」


「…勝手なこと言うなよ。唯、帰るぞ」


上原くんはレオくんの頭をクシャクシャと撫でると背中を向けて歩き出した。


「うん。じゃあね、高井くん。レオくんもバイバイ」


小走りで上原くんに追いつき、ふたり並んで何も話さずに、ただただ歩く。


上原くんは何か考えてるようで先ほどから少し様子がおかしい。


わたしの勘違いなら良いのだけれども。


「上原くん、さっきのことだけど」


沈黙に耐えかねたわたしは思い切って口を開いた。


「さっきって?」


「ほら、何か言いかけてたでしょ?わたしが強くなってって。その後、何て言おうとしたの?」


レオくんが起きてしまって話の続きが聞けなかったわたしは気になって問いただしてみた。


だけど、


「…忘れた。大した話じゃないから、唯は気にしないでいいよ」


「…そっか」


返ってきた言葉は彼にしては珍しくあまりにも感情のない、冷たいものだった。


所詮由香里さんの身代わりでしかないわたしはこれ以上彼の心に踏み込む勇気なんてなくて。


このとき、わたしがちゃんと話を聞いていれば、


また違った未来があったのかな。
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