さよなら、片思い【完】
高校時代の上原くんを想像してみた。


ブレザーだったのかな?学ランだったのかな?


やばい、どっちにしてもかっこいい。


「ねぇねぇ!なんなら今から哲呼ぼうよ!」


閃いた!とばかりに立ち上がる仁奈さん。


「いいね。わたしも久々に哲に会いたいし」


仁奈さんはスマホをとりだして電話をかけるとすぐに通じたのか話し始めた。


「あっ、もしもし?哲?今なにしてんの?……ほんと?じゃあ今から律のお店に来てよ。……いいからいいから!会わせたい子がいるの!」


急な展開に頭が着いていかない。あの上原くんが今からここに来るの!?


「それは来てからのお楽しみ!……律も哲に会いたいって。……はいはい、じゃあね」


「哲、なんて?」


「今駅向こうの本屋にいるからあと10分くらいで着くって。良かったね、唯ちゃん」


全然良くないよ!!


アルバイトの姿だからTシャツにジーンズ、メイクは元々薄いけど更に薄いし、髪型だって後ろでまとめてあるだけ。


こんな格好で上原くんに会えないよ!


「アノ、カエッテイイデスカ?」


「だめだよ!せっかくおもしろく、じゃなかった。せっかくのチャンスなのに!」


仁奈さん、やっぱりおもしろがってる!!本音出ちゃってる!!


「まぁまぁ。仁奈の言う通りこれも良い機会だと思って。唯ちゃんのことだから、見れただけで幸せ、って思ってるんでしょ?」


「それはそうですけど…。わたしなんかが上原くんを好きなだけでもおこがましいような気がして…」


「自信持って!わたし、応援する」


「あたしも!あたしも応援する!!」


突然舞い降りたチャンス。2人に背を押されわたしは少しだけ背筋を伸ばした。
< 8 / 257 >

この作品をシェア

pagetop