さよなら、片思い【完】
わたしが甘い空気を止めてしまったせいでキスはお預けになる。


ぐぅぅ〜


場に似つかわしくないわたしのお腹の虫が鳴り、上原くんが一瞬目を見開いたけどすぐにクスリと笑いわたしの頭をくしゃりと撫でた。


「唯、飯まだだろ?今から食いにいこう。この前充から美味いイタ飯屋教えてもらったんだ」


「うん、行きたい!」


貴方の優しさが幸せすぎて、愛しさが溢れて、


ずっとこの先も一緒にいたいと叶うはずのない願いを願ってしまうんだ。


支度を済ませリビングで待っている上原くんの元へ行く。


「お待たせ、上原くん」


「あぁ。大丈ぶ…」


わたしを見て上原くんは言葉を詰まらせた。


えっ、似合ってないかな?この服…。


「唯、その服どうしたの?」


「この前なっちゃんと買い物に行ったときに選んでもらって。…おかしいかな?」


なっちゃんは可愛い可愛いと連呼して勧めた服はグレイのノースリーブのカットソーに黒のキュロットスカート。


「おかしくはない。けど、ちょっと露出しすぎじゃない?」


「そうかな?」


わたしが首を傾げると上原くんは大きくため息をついて寝室へ向かった。


どうしたんだろう?


「これ、着て」


上原くんが持ってきたのはわたしの薄手のジャケット。


不思議に思いながらも受け取り袖を通すと上原くんは満足そうに笑った。


あれ?


確か前にもこんなことあったような…。


あれは、そうだ。


軽井沢のプールのときだ。
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