さよなら、片思い【完】
あのときも、わたしが持参した水着ではく由香里さんと仁奈さんがプレゼントしてくれた水着で、


上原くんはわたしにラッシュパーカーを着せてきた。


そのときの表情によく似ている。


まさか、他の人に見せたくない、とか?


いや、まさかね。


「さっ、行こう」


「うん」


そんな自分に都合の良い妄想を消し去りわたしは差し出された手を取り、外に出た。


お店に着くと人気店なのかお店の前まで行列ができていた。


「予約してくればよかったな。悪い」


「ううん、上原くんと一緒に待ってる時間も楽しいから大丈夫」


上原くんと並びながら、バイトの常連さんの話や学校の話で盛り上がりながら順番が来るのを待つ。


「わたしもあの犯人がまさか主人公のお兄さんだとは思わなかったなぁ」


「だろ?俺も絶対あの親友だと思ってた」


この前読んだ最新の推理小説の話に花を咲かせているとお店のドアが開き中から食べ終わったのか一組のカップルが出てきた。


もうそろそろわたしたちの番かな、と思いその人の顔を見た。


「えっ…」


わたしと上原くんはふたりしてその人たちを見て驚いた。


「充…」


「てっ、哲!?唯ちゃんも…」


カップルの男の人は紛れもなく杉田くん。


ただ、


「みっちゃん、だぁれ?」


杉田くんの腕に絡みながら舌ったらずな喋り方をしている女の人は由香里さんじゃなく、わたしの知らない人。
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