さよなら、片思い【完】
その日の内に上原くんから連絡が来たけど「充と話した」だけの報告で。


あれから上原くんの態度はいつもと変わらないから、どんな話をしたのか全くわからなくて、


でもわたしがこれ以上踏み込んではいけない領域な気がしてモヤモヤしながらも、


上原くんとの一年記念日を迎えた。


昨日、上原くんから貰った小さなメモには綺麗な字で「12時に時計台の前で待ってる」と一言だけ書いてあった。


時計台は最近出来たの駅前公園にあるレンガ造りの大きな時計台で、今や待ち合わせの名所になりつつある。


服は前日から迷いに迷って、初デートのときに着ていった格好と同じ服にした。


上原くんが可愛いと言ってくれた思い出の服。


それから、軽井沢でプレゼントしてもらったブレスレットを付けて。


「えっ、もうこんな時間!?」


支度が思いの外時間がかかり、上原くんへのプレゼントを鞄に仕舞い急いで待ち合わせ場所へ向かった。


時計台の前に着くと上原くんは既に到着していて、


薄緑のチェックのシャツに細身のジーパン、シンプルだけど彼のために作られたんじゃないかと思うくらい似合っている。


「ごめんね、待った?」


ドキドキしながら話かけると上原くんはやっぱり優しく微笑えみながらわたし首を横に振った。


「いや、俺も今来たとこ。唯、今日も可愛いね」


上原くんがあまりにもストレートに伝えてくるから、びっくりして口をパクパクさせる。


なんとも間抜け面だろうか。


「ハハッ、唯、顔赤くしてパクパクして金魚みたい。可愛い」


「金魚?褒めらてる気がしない」


「そう?可愛いじゃん、金魚。水槽に入れてずっと閉じ込めておきたい」


閉じ込めて…?
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