さよなら、片思い【完】
それから10分も経たない内にカランカランとお店の扉が開く音がした。
「たっく、お前らは人様の休日を邪魔しやがって」
声が聞こえただけで全神経がおかしくなりそう。
心地の良い低音ボイスだけど甘くとろけるように聞こえるのはわたしが彼に恋をしているからだろうか。
「いいから、そこ座って。唯ちゃん、おしぼりとお冷、お願い」
「あっ、はい」
仁奈さんの横に腰を下ろした彼はまるで本物の王子様みたいにこのレトロな喫茶店がよく似合う。
「どうぞ」
ドキドキしながら彼の前にそっと差し出したおしぼりとお冷。
「ありがとう」
わたしの目を見て優しく微笑んでくれた。
わたしたちの初めての会話だ。
たった一言だけど、何よりも嬉しい言葉。
仁奈さんはそんなわたしを見てイヒヒと笑いながらわたしに目を配らせた。
「ところで哲。本屋で何買ったの?エロ本?」
そんな質問をした仁奈さんの頭をペシッと叩くと上原くんは金井さんにコーヒーを注文した。
「でも、本当哲と会うの久しぶりだよね。大学はどう?」
「別に、ふつー。お前の方こそ、子どもの調子は?」
「おかげさまで、とっても順調。みんなと一緒に大学に進学できなかったのは残念だけど、でも大切な宝物が出来たんだもの。すっっっごく!幸せよ」
それからわたしは接客しつつ、ちょっとだけ会話にも参加して。
上原くんはほとんど律さんと仁奈さんの聞き役だったけど。
本当に仲が良いんだなって思った。
「たっく、お前らは人様の休日を邪魔しやがって」
声が聞こえただけで全神経がおかしくなりそう。
心地の良い低音ボイスだけど甘くとろけるように聞こえるのはわたしが彼に恋をしているからだろうか。
「いいから、そこ座って。唯ちゃん、おしぼりとお冷、お願い」
「あっ、はい」
仁奈さんの横に腰を下ろした彼はまるで本物の王子様みたいにこのレトロな喫茶店がよく似合う。
「どうぞ」
ドキドキしながら彼の前にそっと差し出したおしぼりとお冷。
「ありがとう」
わたしの目を見て優しく微笑んでくれた。
わたしたちの初めての会話だ。
たった一言だけど、何よりも嬉しい言葉。
仁奈さんはそんなわたしを見てイヒヒと笑いながらわたしに目を配らせた。
「ところで哲。本屋で何買ったの?エロ本?」
そんな質問をした仁奈さんの頭をペシッと叩くと上原くんは金井さんにコーヒーを注文した。
「でも、本当哲と会うの久しぶりだよね。大学はどう?」
「別に、ふつー。お前の方こそ、子どもの調子は?」
「おかげさまで、とっても順調。みんなと一緒に大学に進学できなかったのは残念だけど、でも大切な宝物が出来たんだもの。すっっっごく!幸せよ」
それからわたしは接客しつつ、ちょっとだけ会話にも参加して。
上原くんはほとんど律さんと仁奈さんの聞き役だったけど。
本当に仲が良いんだなって思った。