さよなら、片思い【完】
「唯ちゃん。ちょっといい?」


そう言われて律さんはわたしをカウンターに座らせると目の前にコーヒーを出してくれた。


「哲と別れたんだって?」


「…はい、昨日」


「あのバカ、昨日連絡よこしてきた。唯のこと、これからもよろしく頼むって。哲なりに唯ちゃんのこと思ってるんだと思う」


上原くんがわたしのことを…?


「哲はね、人一倍優しくて人一倍不器用なの。恋愛に関しては特にそう。鈍感なのよね」


律さんは昔を懐かしむような表情で優しく語りかけてきた。


律さん、まさか…?


「律さんって上原くんのこと好きだったんですか?」


「やっぱりわかっちゃう?もうすっごい大昔の話だけどね。でも哲は由香里しか見てなかったから早々に諦めて出会ったのが今の旦那」


これ内緒ね、と律さんは可愛く人差し指を口元に当てた。


「だからかな、今はもちろん恋愛感情はないけど、哲は大切な仲間だから。唯ちゃんみたいな優しい子と幸せになってもらいたかった」


律さんーー……


「わたし的には唯ちゃんも大切な人だから幸せになってもらいたい。あのバカ以上にね!」


律さんの気持ちが嬉しくてわたしは涙を溜めながら頷いた。


少し冷めたコーヒーはほろ苦くも優しい味がした。
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