秘密。
完全に忘れきってたあたしは楓の話に耳を傾けた。
「俺ら同じ学校通ってて冬真は俺の一個下なんだよ」
「へーじゃあ、あたしと同い年なんだあんた」
「まーな。で、初めて会ったのは冬真の入学式でさ」
「そりゃな」
「目ぇ合った途端、喧嘩ふっかけられた」
「………」
「驚かねぇの?」
「……驚く気力がない」
目が合ったから喧嘩売るって……どこのチンピラだよ。
「ま、もちろん俺が勝利したわけなんだけどよー。ほら、俺って強いから」
「知らないよ」
「んで、冬真のヤロー懲りもせず今度はうちの総長にまで喧嘩ふっかけてよ。総長とは知らなかったみてぇだけど」
……言葉もでません。
「当たりめぇだけど総長が勝ってよ。ほら、うちの総長強いから」
「で?」
「そしたらなんでか知んねぇけどうちの総長、冬真を幹部にしやがったんだ。
いやーあれには驚いたぜ。まぁ、総長命令は絶対だし喧嘩の強さもずば抜けてたし、みんな納得したんだけどな」
あっれー冬真、一気に不良の階段上っちゃった?
てかその総長さん自分に喧嘩売ってきた相手なんかを幹部にしたゃうとか……どんな考えしてんだろう。
「そんで、冬真が幹部になって一緒に行動するようになってから俺ら気付いたんだよな」
「何に?」
「アイツ、肌身離さず携帯持ってて電話が掛かってくるとワンコールもさせてやんないまま出るんだよな。
内容もあんまりいいもんじゃねぇし。
それに放課後になりゃすぐ姿消すし。行動が不審だったんだよな。
で、といつめたら言ったんだよ。“姉を探してる”ってな。
最初は“は?”って思ったんだけど事情聞いていくと“コイツも大変なんだな”って思った」