秘密。
「んで冬真。乗せたはいいけど……溜り場には連れてけねぇぞ」
「…分かってる。俺の家まで送って」
冬真はあたしの腕にしがみ付いたまま言った。
溜り場ってのはもちろん紅華の。
聞く所の噂じゃ紅華は女を認めず、溜り場への立ち入りを許していない。
女子禁制ってワケだ。
どうせ外じゃ適当に遊んでるんだろうけどね。
車が止まったのは発進してほんの5分程たった頃。
降りた先は見上げると首が痛くなる程の高層マンションの下。
ここに来るまで、車内での会話は殆どなかった。
あったとすれば多分紅華絡みの単語会話。
あたしに会話への侵入を許さないような淡々とした簡潔な会話だった。
特に南はあたしが少しでも動く度に睨んでたしなぁ。
「ありがとね、南」
けどあたしは南の態度を気にせずにこりと笑い、扉を閉めた。
南の顔が一瞬歪んだのを、あたしは見逃さない。
「なぁ」
すると窓から顔を出した楓が呼び掛けてきた。
「ん?」
「あんた、これからどうすんだ?」
「これから?…んーどうしよっかなぁ」
「未定ってワケか」
「まぁね」
楓は窓枠に肘をついて「ふーん」と唸った。
ニコニコ笑うあたしとは対称的に楓は無表情で。
「……ま、冬真のこともう一人にすんなよ」
それだけ言って窓を閉めると車はさったと走り去っていった。
「……」
まぁ……こんなもんか。
黙って車が去った方向を向いていると
「ねーちゃん?」
不思議そうな顔をして声をかけてくる。
今の話は……聞こえてなかったみたい。
「ううん。何でもない」
「そっか。じゃあ俺の部屋行こ」