秘密。
「…背、高くなったね。今どのくらい?」
「多分、175…だった」
あたしより10センチも高い。前はもっと小さかったのにね。成長期ってすごいなぁ。
「髪も、染めたんだね。…ピアスも」
ダークブラウンの落ち着いた色にシルバーのピアス。
ピアスに触れると擽ったそうに目を瞑った。
「…ねーちゃん」
「ん?」
「俺…」
あたしに視線を向けた冬真は言いにくそうに言葉を継ぐんでいる。
冬真の言いたいこと、なんとなく分かる。
でもソレの全てに答えることは出来ないんだ。
「ねーちゃんは――…」
「ごめんね、冬真」
あたしは冬真の言葉を遮り声を繋いだ。
どうか今は何も知らないでいて欲しい。
どうか今は
「…何も、聞かないで。お願い…」
ごめんね。
冬真が聞きたかったのは、あたしがなぜ突然いなくなったのか。
少し困惑気味に瞳を揺らす冬真。
「いつか、話すから。けど今は……何も聞かないで欲しい」
「……ねーちゃん」
「いっつも、自分勝手でごめんね」
あたしは冬真から視線を外した。
陽が登って太陽が部屋に光をもたらす。
すると冬真はあたしを抱き締めてきた。
困惑しているあたしに冬真は
「…分かった。何も、聞かない。…けど一つ、教えて」
「……何?」
「俺を、嫌いになった?」
「え?」
「嫌いになったから…ねーちゃんは――…」
「違う。違うよ」
「……」
「嫌いになんかなってない。大好きだよ、冬真。
冬真はあたしの大事な弟だもん」
そう言って優しく髪を梳くと冬真は「そっか」と穏やかに呟いた。