秘密。


「…背、高くなったね。今どのくらい?」


「多分、175…だった」



あたしより10センチも高い。前はもっと小さかったのにね。成長期ってすごいなぁ。


「髪も、染めたんだね。…ピアスも」


ダークブラウンの落ち着いた色にシルバーのピアス。

ピアスに触れると擽ったそうに目を瞑った。



「…ねーちゃん」


「ん?」


「俺…」



あたしに視線を向けた冬真は言いにくそうに言葉を継ぐんでいる。



冬真の言いたいこと、なんとなく分かる。


でもソレの全てに答えることは出来ないんだ。



「ねーちゃんは――…」

「ごめんね、冬真」


あたしは冬真の言葉を遮り声を繋いだ。



どうか今は何も知らないでいて欲しい。


どうか今は


「…何も、聞かないで。お願い…」



ごめんね。


冬真が聞きたかったのは、あたしがなぜ突然いなくなったのか。


少し困惑気味に瞳を揺らす冬真。




「いつか、話すから。けど今は……何も聞かないで欲しい」


「……ねーちゃん」



「いっつも、自分勝手でごめんね」



あたしは冬真から視線を外した。


陽が登って太陽が部屋に光をもたらす。


すると冬真はあたしを抱き締めてきた。


困惑しているあたしに冬真は



「…分かった。何も、聞かない。…けど一つ、教えて」


「……何?」



「俺を、嫌いになった?」


「え?」



「嫌いになったから…ねーちゃんは――…」


「違う。違うよ」


「……」



「嫌いになんかなってない。大好きだよ、冬真。

冬真はあたしの大事な弟だもん」



そう言って優しく髪を梳くと冬真は「そっか」と穏やかに呟いた。
< 32 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop