秘密。
「冬真、行ってきなよ?」
顔を上げてそう言うと、冬真は眉を下げてあたしから離れ難そうな目をする。
うっ……可愛い…。
耳と尻尾を垂れた柴犬みたい。
南からの視線は冬真からあたしに移ったようで、あたしもあたしでなんだか責任を感じてしまってる…。
怖いなぁ、南の視線って。
「夜ご飯ハンバーグ作ってあげるから」
「!」
柴犬…、もとい冬真の耳がぴくりと動いた。
「プリン付きの」
「!!分かった!」
よし、交渉成立!
バッと離れて騒ぎを起こした男達のもとへ行き
「てめぇら表出ろ!んなつまんねぇ喧嘩二度と出来ねぇようにしてやる!!」
二人を引っ張ってどこかに行ってしまった。
冬真が去った後では他の生徒達が割れたガラスや倒れたドアを片付けだした。
黙々と作業をする姿をジーッと見るあたしに生徒達は少し戸惑ったような感じ。
偉いなぁ。不良君だからそのままにしとくものだと思ってた。
実際、銀狼の溜り場とかそうだし…。
「おい、お前」
「ん?」
「さっさと来い」
ここに用はないと言うようにすでに歩きだしていた南が面倒そうにあたしを呼ぶ。
すっごい命令口調。