傷×恋=幸
口元には傷があって、キレイな顔に似合わない。



きっとモテるんだろうな。



「聞いてんの?」

「あっ…ごめん…」

「お前タメ?美人だな」

「美人…じゃない…」

「上に向かってってなにすんの?」

「飛ぶの。その先は自由…だから…」



他人と言葉を交わしたのはあの男を除けばしばらくぶり。



なぜか暖かくて、目にこみ上げる熱いモノ。



「人間だから飛べねぇよ?羽根生えてねぇじゃん」

「飛んだら落ちるんだよ」

「落ちたら死ぬけど」

「うん」

「気分わりぃって言ってんの」



他の場所にすればよかったと後悔したのは、この人の目が怒ってるように見えたから。



止めないでよ…。



「めんどくせぇから理由とか聞かねぇけど。なんで泣いてんの?死にたくねぇんじゃねぇの?」

「わかんないっ…」

「じゃあ生きたらいい。まず、俺の前で死ぬのやめろ。夢に出てきそう」



その人に腕を放された途端、腰が抜けた。



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