傷×恋=幸
駅に着くまでずっと手を繋いでいた。



離さないように、離れないように。



そんなに大した距離じゃないけど、あたしには遠すぎるように思えてしまう。



「まだ…帰んない…」

「帰る」

「冷たい!!」

「毎回そうなってちゃキリがねぇ」



パッと手を離され、また心が泣きそう…。



その時、気づいたのは風都の目の寂しさ…。



風都と離れる時、あたしばっかりがいっぱいいっぱいで気づいてなかった…。



風都がそんなに悲しい目をしていたことに。



あたしと同じ気持ちの人がいる。



同じ苦しみを味わってくれる人…。



「風都、ありがとう」

「は?意味わかんねぇから」

「離れること、あたしが選んだのに…。着いてきてくれてありがとね」

「バカじゃねぇの?調子に乗ってんじゃねぇよ、ちーのくせに」



きっと風都の方が辛いはず…。



なのに…風都は受け入れてくれてる。



なんだか風都が大人になった気がして、また寂しくなった。



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