秘密の世界
「では、私もここに残ります。」


王妃は涙を拭き、立ち上がる。


「!?・・危険です王妃!ここには、いられません!」


「いいえ、残ります。私は生涯、あの方といることを決めました。今更、私たちだけ逃げるわけにはいきません。民も心配です。私はここに残ります。」

「王女はどうするおつもりですか!」


若い男が言う。

一瞬、王妃は幼い我が子を見て迷った。


「・・・リナーミは、・・・人間界へ行き、あなたたちで守ってください。」


「しかし王妃、これは王の命令です。逆らうわけには・・・。」


リーダーの男が反論する。けれど、王妃の意志は強かった。


「王に絶対の権力はありません。王は民の意見を聞き、その決定権があるだけです。では、私はこの天界の1国民として意見します。反対する者は・・・!?」


皆は王妃の瞳が覚悟を決めているのを見た。
リーダーが告げる。


「ありません・・・。」


「では、少し手を貸してください。1人は避難場所の確保を。2人はほかの警備隊達と国民を退避させ、安全の確保をお願いします。あとの1人は、この子と先に人間界へ。私は王のもとへ向かいます。それと、この子は・・・人間として育ててください。まだ、この子は1歳。たぶんこのことは記憶に残らないでしょう。」


王妃は、悲しげにほほえみながら娘を見る。


「あなたは生きて・・・人間界で幸せに暮らしてね。」


「おかあちゃま?」


王女は首を傾げている。
皆は一瞬、目を見張ったがすぐさま3手に分かれ、王妃の命令に従った。王妃は娘を抱きしめ、くるりと踵を返し、まだ日が昇らない夜明けとともに走り出した。
















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