秘密の世界
すると、奥からぞろぞろと人々が出てくる。両腕には手錠をはめられて、わんわん泣く子供、暗い顔をした人々。天使の羽が片羽折られて血を流している人もいた。王妃はわなわなとふるえる。


『死人は出さないようにしておいた。まぁ、お前が私から逃げたら、ここは血の海と化すだろうがな。』


「やめて!!・・・いいわ。その条件をのみます。だから、人々を帰して!そして、そのあとは、もうここには来ないで!」


『いいだろう。しかし、この男はお前が私のもとまで来て、あれを外したらそちらに渡そう。』


魔王はぐったりした王の後ろえりを指でつまみ上げた。


「あなた・・・!?」


王妃の叫び声に王は気がつき、必死に首をあげて口を動かす。来るな!と。少し動くだけでも苦しいはずなのに、王は王妃の心配をしていた。
人々が全員無事にこちらへ来た後、王妃は少し光を帯びた後、堂々と魔王のもとへ歩き出す。
後ろでは人々の声、前では夫が必死で訴えてくる。けれど、王妃は歩き続けた。そして、魔王のもとへたどり着いたとき、魔王は王を遠くへ、民衆達のもとへと投げ飛ばし、手を振り上げた・・・。



血が飛び散る。



王は壁にぶつかり床に転がったが、必死に顔をあげた。目の前で王妃が血を流し、バタッと倒れる。魔王はニッと不気味に口端をあげ、部下達と一瞬にして姿を消した。


城から黒い霧が消え、青空が広がる。王は必死に立ち上がり王妃のもとまで足を引きずりながら駆けつけ、抱き上げる。服を赤く染め、目をつぶるその姿に、王は思い出す。魔王に投げられる瞬間に、自分にありがとうと優しくほほえみながら告げる、王妃の姿を・・・。



「わあああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー!!」



王の泣き叫ぶ声が、空遠くまで鳴り響いた。































































< 19 / 33 >

この作品をシェア

pagetop