おおかみくんと1週間
「…さぎ」
「…」
「うさぎっ!!!」
「わぁっ!!!な、なにっ!!?」
とある教室風景。
教室には真夏の太陽が照りつけ、休み時間の騒ついた声と扇風機の音が響いている。
その中でうさぎと呼ばれた少女、矢木 璃兎は太陽を囲う青く広がる空を見上げていた。
「ど、どうしたの?沙久(さく)…」
「あんたがぼーっとしてたから声かけてやったのよ」
沙久、と呼ばれた少女は木之本 沙久(きのもと さく)といい、璃兎の一番の親友である。
沙久は璃兎の席の前でやれやれと呆れたように腕を組み、片足に体重をかけた。
「ところでさ、明日転校生来るんだって」
沙久の言葉に驚く様子もなく、璃兎はへぇ、と言葉を返す。
「無関心ね。あんた、可愛いし、ホントにうさぎっぽくてふわふわしてんのに、そんな素っ気ないとモテないわよ?」
「いーよ。私にはカンケーないもん。それに可愛いくないしうさぎじゃない。恋愛とか、よくわかんないしね」
璃兎はそう言うとまた空を仰ぐ。
―転校生、か
親友の言葉を頭の中で復唱する。
しかし、やはり興味など微塵も湧かなかった。
―その転校生に会うまでは