ブルーローズ ~私が死んだ理由~
車なんてほとんど乗った事がないから、シートベルトは付けるも外すも時間がかかるし、そこに男の圧力、前日寝違えた背中の痛みが重なれば、どれも言い訳だが、簡単にはこの場から逃げられそうもない。だから、もっと早く、男が『交尾』を口にした時点で逃げるべきだった。私にも過失はある。
 それでもこの件がなければ、私は未だに「恥ずかしい、恥ずかしい」と言って逃げ回っていただろうし、終了後、「ニオイとか平気だった?」と男に感想を聞いて、その答えに少しホッとした。
 イジメという枠組みの中で、私を汚物のように扱ってきた男達とは対照的に、その身に好んで触れた理由こそ愛なら、今後、再び和哉と連絡が途切れた際のスペアとして、抱擁だけ頼めれば…とメールを送るも、返ってきた答えは、

 「いいよ、またHしよう。しのは本当は処女じゃなかったんでしょ?」

 期待した自分も愚かだと思った。


 寂しい…
 あと何日待てばいいのだろう。あれから1週間、未だ連絡はない。
 「捨てられたんじゃない?」
 メル友の言葉に、不安は確信へと変わった。

 「私の事、捨てたの?」…届くはずのないメール。

 その頃、彼の携帯は料金未払いによる停止中で、私も日時は予め知らされていた。ただ、あの頃の私は携帯停止の本当の意味を知らず、メンテナンスなら、翌日には復旧してるはず…と、停止翌日に送信したのが地獄への入口だった。
 無論、返信などあるはずもない。
 「捨てられた…H目的だったんだ。私が本気にしたから、彼は困ってデートもドタキャンしたんだ」
 あの日、前日まで彼に全くその気がなかった事を思うと、他に考えられなかった。
 これを知った元・彼氏候補達は、「だから、俺にしとけばよかったんだ」と、恋の結末を笑う。
 すぐに募集して会った新しい彼氏候補には、抱擁だけ許可したつもりが最後までOKだと誤解され、Hまでして散々悩んだあげく、話が合わない事を理由に私から交際を辞退する。
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