ブルーローズ ～私が死んだ理由～

　その僅か2日後、己の過ちを知った…
　「元気？ やっと熱が下がったよ」
　友達の携帯からという彼のﾒｰﾙは、この半月の不安を想像だにしないものだった。
　「私の事、捨てたんじゃないの？」
　彼はあの日、私が送ったﾒｰﾙを見ていないという。だから、私がどんなに不安だったかわかってほしくて、この間の出来事を包み隠さず話したら、彼は私が“恋人がいるのに平気で他の男と寝る女”と誤解したのか、「俺が同じ事をしたら？」と私に問う。
　もちろん、嫌に決まっているが、もし、逆に彼が放置によって私に捨てられたと誤解して、他の女性とそういう関係になったとしても、放置で不安にさせた側にも非があるし、ウツや妊娠で夜の相手が出来ない時、私は「風俗に行ったから裏切りだ」とは言えない。
　「場合によっては、仕方ない。でも、仮に他の女とＨしても、心では私だけを愛してほしい」
　そう返信したら、彼は怒って「勝手にしろよ!!」と、一方的に別れを告げられた。
　こんな事なら、最初からずっと友達のままでいればよかった…
　気付けばまた、ひとりぼっち。犯した罪の重さだけ、死を考えずにはいられない。

　別れのｼｮｯｸから、一括削除したｱﾄﾞﾚｽ帳。再度、和哉に連絡して誤解を解こうにも、ｱﾄﾞﾚｽがわからない。
　彼が見る可能性を考え、2人が出会うｷｯｶｹとなった掲示板に最後の望みを託すも、届くのは何も知らない第三者からの心無いﾒｰﾙばかり。その多くは「お前が悪い」と責める内容から、「死にたい」に対する「死ねば？殺してやるよ」等の自殺補助にまで及び、たまたま書き込みを目にした彼の友人からのﾒｰﾙも、すがりつくように『死』という脅迫を並べる自分を愚かに思いながら、自殺を承認するかのような見放した態度に、幸福な未来など思い描けるはずもない。
　「私を愛して…」
　「私を殺して…」
　「死死死死死死…」
　連日、画面いっぱいに貼りつくような気味の悪い文章に、多くがそれを死という結末で望んでいる。
　「死ね」
　「死ぬなら、その前に俺とＨしよう」
　人気ｻｲﾄ故の圧倒的な数に、一部の励ましなど何の意味も持たない。そう、ﾒｰﾙは口先だけの優しさと同じ。いつだって、隣には誰もいない。