ブルーローズ ~私が死んだ理由~
 30分してようやく静かになったが、安心したのも束の間、翌日、またその男からメールが届いた。

 「お前の事、富津の友達に聞いた。お前、友達いないんじゃなくて、嫌われ者だったんじゃん。この辺じゃ、絶対、友達出来ねーぞ。皆、お前が嫌われ者だって知ってるからな。嫌われ者なんか、誰も相手するわけない。サイトにも『コイツ、嫌われ者です』って、書いといてやったからさ。あと、お前がネットで彼氏募集してるって話したら、皆、大笑いしてたぞ」

 里奈を失った今、同級生で交流のある人物は誰もいない。「この人は味方だ」と自信をもって言える相手がいないから、何百人といる同級生全員が敵の仲間に思えて、街でバッタリ会って指をさして笑われたら…と思うと、外に出るのが怖くなった。
 私はこの先ずっと1人なの?
 嫌われ者は愛を求める資格もないの?
 奴の言う事は間違いだと、嫌われ者だって友達や恋人が作れるんだと早く証明したくて、次々、彼氏候補と会っては、半年で20人近くやり逃げされた。最初からやる気満々で会いに来る者もいれば、「もっと自分を大事にして」と言って、結局やって帰る人。たいてい、会った翌日にメールは途切れ、「3日でサヨナラなんてしないから」と言った人も、4日目には着信拒否。
 「気に入ったら、抱きしめてね」
 “抱いて”と“抱きしめて”は違うのに、気に入っても、恋人にする気がないなら触らないでほしいのに、ハグされるたび、恋人として気に入ってくれたのかなと期待して、最後まで体を許してしまう。
 来る者拒まず、去る者追わず。
 恋は夢中になった方が負け。本気か嘘か見抜けないうちは、「好き」には「好き」、「嫌い」には「嫌い」と、相手に合わせている方が気が楽だ。和哉を追って「死ぬ、死ぬ」言ってた自分を、今じゃバカらしいと思う。
 「汚い」、「こっち見るな、目が腐る」…汚物として、そこにある事自体が罪だったこの体に、異性が触れる喜び。例え、やり逃げでも、そこに恋人という可能性さえあれば、抱かれている間だけは幸せだった。

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