ブルーローズ ~私が死んだ理由~
 専門学校に入学してからも、図工で使う版画板を私のだけ隠すように箱の下に放置されていた事があった。それがイジメでもイジメじゃなかったとしても、大人社会にもイジメがあるのは事実だし、今の自分にイジメのある・なしは関係ない。
 その日の夜、ほとんど話した事がない未絵から電話があった。
 「明日、学校来る?一緒に座ろう」
 クラス替えで孤立でもしたのだろうか?
 迷わず「うん」と答えるも、翌日、いつものように遅刻してしまう。未絵は友達と相席してたらしく、遅刻した私の方が悪いのに「ごめんね。明日は一緒に座ろう」と、謝ってくれた。私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
 それからも未絵の「一緒に座ろう」は続き、私もその場では「うん」と答えるものの、自分から隣に座る事は出来ない。だから、いつも彼女の方からやって来た。未絵の優しさが口先だけではないと証明されたのに、昨日よければ今日も…と安易に期待する事が調子にのってるように思えてならない。
 また、谷川も私を心配してはくれるものの、別の友達と合流し、谷川が私とペアを…という淡い期待も叶う事はなかった。
 寂しさからわざと遅刻し、千葉の専門学校に通う里奈と電車通学を共にしても、交際歴の長い彼女さえ、横に座るのを一瞬ためらう自分。会話が途切れるたび、目をとじようとする彼女に、己がいかに迷惑な存在かを思い知る。

 社会人になる前の躾とも言える遅刻・欠席の管理も、金が絡んでくると脅迫でしかない。
 「遅刻が多い生徒は、家に電話して親を学校に呼ぶ」
 担任の言葉は、焦りに拍車をかけた。
 事実、母は学校に呼出をくらい、しかしながら、その理由は全く別の事だった。
 「忍ちゃんがトイレに隠れてる」
 生徒の一部が、そう担任に報告したらしい。
 皆にとって私は、好んでいつも1人でいる不可思議な存在だった。
 無論、好んでなどいないし、一緒にいて居心地が悪い思いをするなら1人の方が…と考えていただけで、自分から孤独を望んだわけじゃない。
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