ブルーローズ ~私が死んだ理由~
23.続・母の病気
 あれから1ヶ月、リハビリは順調に進んでいた。社会保険が切れる1年半後をタイムリミットに、母は職場復帰を目指し、包丁さえも握った。そして3月、リンゴの皮をらせん状に剥く事に成功。杖なしでも歩けるようになり、5月下旬には自転車もクリア。同年6月12日を最後に、無事、リハビリを終了する。

 そんな母とは対照的に、私は相変わらず無職の日々で、連日、母に「働く気はあるのか? この先、社会保険が切れて、お母さんも働けなかったらどうするの? 食べていけないよ」と言われても、その時は死ねばいいと、そんな事ばかり考えていた。
 「ゴハンなんて、毎日、鉄砲巻きでもいいんだからね」
 そうは言われても、おかかとノリだけじゃ栄養が悪いし、畑のタダ食材メインに肉少しの献立を考えれば、鉄砲巻きの話はどこへやら、家族は、
 「焼き肉が食べたい」
 「肉だけでいい」
 と、肉肉ばかりで、この頃を境に母はワガママが酷くなり、私も親子関係が崩壊する程のストレスに巻き込まれていく…
 食事中の居眠り。テレビに夢中で、いなり寿司1個食べ終えるのに4時間も必要で、「食べてから、ゆっくり寝ればいいでしょ。テレビなんか見てないで、さっさと食べな」と注意しても、バカにするようにケラケラ笑うだけ。罰として食器洗いを命じれば、私の事は家政婦扱いして「あんたの仕事でしょ」と、文句ばかり。私がテレビを見て笑えば、「アハハじゃないだろ」と笑う事を禁じられ、懸命に働く子のシーンを見れば、「偉いわよね。それに比べてウチの子は…」と言いたげに、無言で顔をジーッと直視されるから、たまったもんじゃない。
 秋になっても改善が見られず、体重、気力、体力は低下する一方。
 「明日、食べる」と言うから残り物をラップしておけば、翌日は手をつけず、新しいおかずに手を出して、そうやってまた残して増えていくおかずを、もったいない精神から「昨日の分を食べないと、今日の分は食べさせないよ」と意地悪すれば、「野良猫にやるから、いいじゃん」と平気で残し、捨ててしまう。
 それならと、今度は自分で食べれる量だけ盛らせれば、必要以上に取って残すか、「盛るのもあんたの仕事」と言って、いつか「全部食べ終えるまで寝かせない」と粘ったら、明け方3時までかかった事があった。
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