Stare Melody
「じゃあ、行ってきます。」
オレは柊にそう声をかけると、椎名と共に3年生の教室に。
「斎藤先輩、いらっしゃいますか?」
「斎藤ー」
「何の用?」
見た目は普通だけどスポーツ出来そう。きっとモテるんだろうなっていう雰囲気の人だった。
「先輩にお届け物です。因みに返品はききません。」
不敵な笑みを浮かべて椎名は言い切ると、「では失礼します」と早々に立ち去ってしまった。慌ててオレも会釈をして立ち去る。
「お前早すぎ。」
「面倒やもん。」

……言い方が意外に子供だ、新発見。

「ヘマもへったくりもない。」
「依頼は渡すだけやもん。」
口を尖らせて言う彼に違和感を覚えつつも、オレはその場を流してしまった。


放課後、早めに生徒会室に入るとそこには、集中して何かの書類を書く生徒会会計がいた。

……会計なのにあそこまでする必要あるのかなあ。

「椎名、少し休んだら?」
「ん、これ終わったらそうするわ。」
辛そうな微笑みに再び違和感を覚える。その違和感を確かめるために、(不意打ちで)額に触れてみる。
「熱っ!お前、我慢しすぎだろ!」
一通り怒鳴っていると、見たことの無いくらいしょんぼりした顔が。今までクールな喰えない顔ばかりだったので拍子抜けした。この表情は素らしい。

……なんだ、人間らしいとこもあるじゃん。

今まで如何に自分が椎名を胡散臭いと見てきたかが分かる、今のオレの感情。
「ごめん、迷惑かける。」
「いい、そんな言葉いらねぇ。」
「ありがと。」
目を微かに細めて笑うと、ゆっくり目を閉じた。額の上に濡れタオルを乗せてやれば、幾分薄らいだ苦痛の表情。
オレはそっとその髪を梳いてみた。柔らかい。
「無茶しやがって。」
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